ディープステートとトランプ大統領
FRB・関税・ウクライナ戦争をめぐる“闇の構図”を読み解く
「ディープステート」「FRB」「グローバリズム」「ウクライナ戦争」――
こうしたキーワードは、今や陰謀論界隈だけでなく、米国の保守層や一部の識者の議論の中でも頻繁に登場します。
とくにトランプ大統領(再登場後のトランプ政権)は、
「ワシントンの闇」「ディープステート」と正面からぶつかっている
“反グローバリズムの象徴”として語られることが多くなっています。
本記事では、以下のような視点を整理します。
- ディープステートとは何か?(陰謀論としての側面と、学術的な議論)
- FRB(連邦準備制度)と戦争・軍産複合体の関係はどう語られているのか
- トランプの関税政策は「FRBを止めるため」だったのか?
- カッシュ・パテルら側近が語る「Government Gangsters」とは
- ウクライナ戦争・プーチンをめぐる“ディープステート物語”
- 日本の自民党とCIA、日米合同委員会にまつわる話
あくまで支持者がどう見ているか/歴史的事実はどうかを分けて解説します。
ここから先は、読者自身が「どこまで信じるか」を冷静に判断してください。
1. 「ディープステート」とは何か?
1-1. アメリカで語られる“深層国家”のイメージ
アメリカで「ディープステート(Deep State)」と言うとき、
よく挙げられるのは次のようなイメージです。
- 金融エリート
- メディア大手
- 軍産複合体(軍事企業+国防・安全保障官僚)
- 情報機関(CIA・FBIなど)
- 司法・官僚組織
これらが選挙とは別のラインでつながっており、
世界の戦争・金融システム・世論をコントロールしている、という構図です。
実際、米国の政治学・メディア研究の中でも、
「官僚機構や軍産複合体が選挙政治と別に巨大な力を持っている」という議論は存在しますが、
それを“陰謀ネットワークとしてのディープステート”とみなすかどうかは、大きく意見が割れているところです。
主流メディアや多くの研究者は、
ディープステートは、証拠に乏しい政治的陰謀論である
と位置づけ、一方で、
官僚機構・軍産複合体・金融エリートなどが民主的コントロールから離れやすい
という懸念は、別の文脈で真面目に議論されています。
1-2. トランプとディープステート
トランプは2016年以降、自身の政権に対する捜査・リーク・メディア報道などを
「ディープステートによる妨害」と表現し、支持者に対して訴えてきました。
その結果、
- 司法省やFBIへの不信
- 情報機関への不信
- 大手メディアを「フェイクニュース」と呼ぶレトリック
が、「反ディープステート」「反グローバリズム」の文脈とセットで語られるようになっています。
2. FRB・戦争・軍産複合体をめぐる物語
反ディープステート論では、よく次のような構図が語られます。
FRB(中央銀行)が戦争資金を作る
→ そのお金で軍需産業が儲かる
→ ネオコンが戦略を立てて各地で戦争を起こす
→ メディアがそれを正当化する
→ 抗議する国民をFBI・CIA・司法が抑え込む
これは「軍産複合体+金融エリート」の批判を、
ディープステートというラベルで一本化したイメージと言えます。
2-1. FRBとはそもそも何をする組織か
FRB(連邦準備制度)は、アメリカの中央銀行システムで、
- 物価安定
- 雇用の最大化
- 金融システムの安定
を使命として、利上げ・利下げや国債買い入れ(量的緩和)などを行う機関です。
国家予算を決めるのは議会と大統領であり、
戦争のための軍事予算そのものを決めるのはFRBではありません。
ただし、
- FRBの金融政策が国債金利・通貨価値に影響し、
- その結果として、政府が多額の戦費を賄いやすくなる
という意味で、「戦争を支える金融システムの一部」と批判されることはあります。
2-2. アンドリュー・ジャクソンと“中央銀行との戦い”
「アンドリュー・ジャクソン」は、19世紀のアメリカ第7代大統領。
彼が戦ったのは、現在のFRBではなく、第二合衆国銀行(Second Bank of the United States)でした。
- 当時の中央銀行的な存在だった第二合衆国銀行の再認可法案を、1832年にジャクソンが拒否(いわゆる「バンク・ウォー」)。
- これは、「金融エリートが政治を支配するのを許さない」というポピュリズム的な戦いとしても知られています。
現代の反ディープステート派・反中央銀行派は、
このジャクソンの姿を「FRBと戦うトランプの歴史的先輩」のように重ねて語ることが多いです。
3. トランプの関税と「FRBを止める」という解釈
トランプ大統領の関税=FRBを止めるため
政府が潤った収益で国民に還元→FRBにお伺いを立てる必要無し
3-1. 関税は「不公正貿易への対抗」
トランプ政権(第1期・第2期ともに)の公式説明では、
鉄鋼・アルミ・中国製品への追加関税の主な目的は、
- 中国や他国の不公正貿易・ダンピングから
米国の産業(鉄鋼・アルミなど)を守る - 貿易赤字の是正
- サプライチェーンの再構築と雇用維持
とされています。
ここには、FRBを止めるためという公式説明は出てきません。
3-2. 反ディープステート派の解釈
一方で、反ディープステート派・一部のトランプ支持者は、
- 関税で政府の税収(関税収入)を増やす
- そのお金を国民に直接還元(給付金など)
- そのプロセスは、FRBからの借金・マネー創造頼みではない
- だからこそ「自国通貨の主権を取り戻す動き」だ
と解釈します。
つまり、「FRBではなく、関税収入+自国政府の力で国民を守る」という物語です。
ただし、ここは経済理論的にも大きく意見が割れている領域であり、
- 関税は消費者物価を押し上げ、国内の一部産業も打撃を受ける
- 長期的には成長率を下げかねない
といった批判も根強いことは押さえておく必要があります。
4. カッシュ・パテルら「トランプ側近」のディープステート批判
4-1. カッシュ・パテルと『Government Gangsters』
現在のFBI長官カッシュ・パテルは、
ディープステートと戦うトランプ大統領の側近であり、
2023年に『Government Gangsters: The Deep State, the Truth, and the Battle for Our Democracy』という本を出版
という流れがあります。
この本の中でパテルは、
- 官僚・情報機関・司法の中に存在する「政府ギャング」
- トランプ政権を内部から妨害した勢力
- それらを“ディープステート”として名指しで批判
といった主張を展開し、「闇の政府リスト」とも言われるリストを掲載したことで論争を呼びました。
4-2. ジョン・ラトクリフ/リチャード・グレネルらの役割
トランプ政権下では、
- ジョン・ラトクリフ:国家情報長官(Director of National Intelligence)を務めた。
- リチャード・グレネル:ドイツ大使を経て、同じくDNI代行を務めた。
など、「情報コミュニティのトップ」にトランプ寄りの人物が据えられたことで、
トランプ自身も、
これまでの情報機関の在り方をひっくり返し、
ディープステートの浄化を進める
とアピールしてきました。
ただし、こちらも
- 反ディープステート側:
「ようやく闇の暴露が始まった」と評価 - 批判側:
「情報機関の独立性を損ない、忠誠心を優先した人事だ」と警戒
という真逆の受け止め方が存在します。
5. ウクライナ戦争・プーチン像とディープステート物語
トランプ大統領はウクライナ戦争を終結させるために頑張っている
実はプーチンは、ディープステートの侵略から解放するために叩き出した
メディアに叩かれる人=本当はディープステートと戦う側だ、という見方
ここも、現実の国際政治と、支持者の物語を切り分けて考える必要があります。
- 国際法上・多くの国際機関の立場:
ロシアのウクライナ侵攻は違法な侵略行為とされている - 一部の“反グローバリズム/反NATO”の論者:
NATO拡大や西側エリートの覇権を止めるための戦いだ、と解釈
といったように評価は真っ二つです。
トランプ自身は、
「自分なら短期間で戦争を終わらせられる」と再三発言していますが、
具体的な和平案や、ウクライナの主権・領土問題をどう扱うかについては、
国内外で激しい議論があります。
ここでも、
メディアが激しく叩く人物(トランプ・プーチン等)=ディープステートから見て“都合が悪い存在”
というパターン認識が、反ディープステート派の世界観を支えています。
6. 日本の自民党とCIA、そして日米合同委員会
自民党設立時にCIAがかかわっていたというのはもう知られた話
アメリカはディープステート側の民主党・愛国者たちが集まる共和党が争っている状態
とあり、日本側の“ディープステート論”と結びつける視点も示されています。
6-1. 自民党とCIA
戦後日本政治の研究では、
- 冷戦期にアメリカ(CIA)が、日本の保守系政党・政治家への資金提供や選挙支援を行った
- その一環として、自民党の形成・維持に影響を与えた
とする研究・証言がいくつも存在します。
ただし、
- どこまで深く介入していたのか
- それが現在の日本政治にどれほど“生きている”のか
については、学問的にも議論が分かれています。
6-2. 日米合同委員会をどう見るか
日米合同委員会は、
日米地位協定などに基づき、在日米軍に関する運用などを協議する場です。
批判的な論者は、
日本の主権の外側で、
米軍・米政府と日本官僚が密室で物事を決める“影の統治機構”だ
とみなし、これを「日本版ディープステート」の一部として語ることがあります。
一方で、政府側は、
安全保障上の情報を扱うため、非公開性はやむを得ない
あくまで日米同盟運営の実務的会議に過ぎない
と説明しており、ここでも評価は二極化しています。
7. まとめ:物語としての「ディープステート」をどう扱うか
ここまで見てきたように、
- FRB・中央銀行と戦争の関係
- トランプの関税政策の意味
- 情報機関や官僚機構の“自律性”
- ウクライナ戦争・プーチンをめぐる評価
- 日本の自民党とCIA・日米合同委員会
これらは、それぞれ単独でも複雑なテーマです。
反ディープステート派の世界観では、
これらが一本の線でつながり、
金融・メディア・軍産複合体・司法・官僚がグローバリズムを推し進め、戦争と統制を拡大する
それに対抗するのが、トランプや「愛国者たち」だ
という物語として語られます。
一方で、主流の研究・メディアの多くは、
- ディープステートという“単一の陰謀ネットワーク”は証拠に乏しい
- ただし、官僚機構や軍産複合体・金融エリートが、
民主的統制から離れた力を持ちうる、という構造問題は確かに存在する
という、より複雑でグラデーションのある見方を提示しています。
おわりに:読者にできる唯一の“対抗策”
ディープステートという言葉は、
陰謀論と現実の権力構造のグレーゾーンを行き来する、非常に「使いやすいラベル」です。
だからこそ、
- 誰が、どの立場から、その言葉を使っているのか
- その裏に具体的なエビデンスがどれだけあるのか
- 物語として“気持ちいいだけ”になっていないか
この3つを、常に自分でチェックする必要があります。
トランプ大統領やその側近たちが語る「Government Gangsters」的な視点も、
主流メディアや学術的な分析も、どちらか一方だけを信じる必要はありません。
むしろ、
両方の情報を知ったうえで、
「この事実から、自分はどう考えるか?」
を考えることこそ、
ディープステート的な“情報コントロール”への、
一般市民としての一番の対抗策なのかもしれません。

