はじめに:賛成か反対か?その前に「中身」を知る
「緊急事態条項、あなたは賛成ですか?反対ですか?」
僕(鷹宮龍信)は現時点ではかなり慎重・ほぼ反対寄りの立場です。
ただし、この記事では単に賛成/反対を煽るのではなく、
- そもそも緊急事態条項とは何なのか
- いま日本でどこまで議論が進んでいるのか
- どんな危険性と論点があるのか
を、できるだけ事実ベースで整理していきます。
この記事を読み終わるころには、
「なんとなく賛成/反対」ではなく、
自分の頭で判断できる状態
になってもらうことをゴールにしています。
1.いま緊急事態条項はどこまで進んでいるのか?(2025年11月時点)
まずは現状の整理から。
- 2025年6月22日に通常国会が閉会
- 自民党は「選挙困難時の国会機能維持(議員任期の特例延長)」に関する骨子案(たたき台)を提示
- 一方で、「条文案」を作る起草委員会(正式な文案を作る専門チーム)の設置は、今国会では見送り
つまり、
「骨組み」は出たが、 具体的な条文を作り始める一歩手前で止まっている
という状態です(2025年11月7日時点)。
表向きは「選挙ができない緊急時に、国会機能を止めないため」という説明ですが、その裏で何が変わり得るのかを見ていく必要があります。
2.なぜこんなに問題になるのか?── 憲法と法律の“ヒエラルキー”
緊急事態条項がこれほど議論になる理由は、
「法律の話」ではなく「憲法そのものを変える話」だからです。
山本太郎氏の国会質問などでも示されているように、
出典:【山本太郎最新】高市総理が考える緊急事態条項がヤバい…カネに纏わること野党抜きで進められてしまう…国民は憲法改正の変更には警戒すべき!!【山本太郎/高市早苗/れいわ新選組】#憲法改正
- 一般の法律
- 条約・協定(国同士の約束事)
- そしてその上に位置づけられるのが憲法
です。
憲法は、
「国(政府・国会・内閣)が何をしていいか/してはいけないか」 を最上位で制限し、 その下で法律や条約が動くための“ルールのルール”
です。
だからこそ、
ここに「緊急時には権限を拡大していいよ」という条項を入れるかどうかは、
普通の法律改正とはケタ違いに重い問題になります。
3.自民党案の「条文イメージ」で何をしようとしているのか?
2025年 自由民主党「憲法改正実現本部」が出している資料では、
緊急事態条項の「条文イメージ(たたき台)」として、主に次の2本柱が示されています。
出典:(解説版)「日本国憲法の改正実現に向けて」
- 国会議員の任期延長
- 民意を代表する国会の機能を維持するため
- 災害や戦争などで「選挙ができない」ときに、議員の任期を特例で延長する
- 内閣による「緊急政令」の制定
- 国会による法律制定を待てない「特に急を要する場合」に
- 「国民の生命・身体・財産を保護するため」として、内閣が政令で一時的に法律と同等の効力を持つルールを出せるようにする
ここでポイントになるのが、
- ①任期延長(国会議員の立場を延命する仕組み)
- ②私権制限につながる可能性のある緊急政令権限
の2つです。
4.今の制度はどうなっているのか?── 衆議院解散と参議院の「緊急集会」

4-1.現行の衆議院・参議院の仕組み
- 衆議院:任期4年。ただし、途中で解散されることがほとんど
- 参議院:任期6年。半数ずつ3年ごとに改選
日本国憲法54条では、衆議院が解散されたときのために、
「参議院の緊急集会」
という仕組みが用意されています。
衆議院が解散中で不在のとき、
内閣の判断で参議院が緊急集会を開き、
必要な措置を決められるようになっているわけです。
4-2.自民党側が主張する「現行制度の弱点」
自民党など改憲推進側は、現行制度の問題点として、主に次を挙げています。
- 大規模災害やパンデミックと衆議院解散が重なった場合
→ 被災地で選挙ができない
→ 新しい衆議院を選べず、政治空白が生じるおそれ - 参議院の緊急集会には制約が多い
- 新しい衆議院が集まってから10日以内に同意しないと、決定が無効になる(長期対応に向かない)
- 権限の範囲が限られ、憲法に関わる重要事項は扱えない
- 参院の緊急集会を開くかどうかは内閣の裁量であり、都合で遅らせる余地がある
このため、
「こうした“現行憲法54条の限界”を補うために、
憲法に任期延長や緊急政令のルールを明記すべきだ」
というのが、賛成側の大枠のロジックです。
5.私権制限と憲法:今のままでもどこまでできるのか?
緊急事態条項の議論でもう一つの焦点になるのが、
「私権制限(国民の自由・権利の制限)」をどこまで認めるか
という点です。
5-1.憲法13条・29条と「公共の福祉」
日本国憲法では、
- 13条:個人の尊重・幸福追求権
- 29条:財産権
などで、
「人の自由や財産を尊重せよ。
ただし、公共の福祉のため、必要最小限なら制限はOK。財産を取り上げるなら補償も必要」
という枠組みを定めています。
これを根拠に、
- 災害対策基本法
- 道路交通法
- 感染症法
- 新型インフル特措法(コロナ特措法のベース)
などの法律によって、
すでに一定の私権制限が可能になっています。
実際、コロナ禍では、
- 緊急事態宣言の発出
- 休業・時短要請
- 入院勧告・就業制限 等
が行われ、違反した場合に過料(行政罰)が課されるケースもありました。
5-2.「現行では絶対にできないこと」の例
一方で、現行憲法+法律では難しいとされるものもあります。たとえばイメージとしては:
- 全国一律の「外出禁止令」を罰則付きで出すこと
- ワクチン接種や個人追跡を法的に強制するレベルの措置
- 国会議員の任期を包括的に延長すること
などです。
こうした“より強い私権制限”や“任期延長”を可能にするためには、
個別立法を積み上げるか、憲法自体を変えるかのいずれかが必要になる、
というのが賛成派の論点です。
ただし、それが「本当に必要なのか?」「どこまでを許容するのか?」が、まさに争点になっています。
6.賛成派と反対派、それぞれの主張の整理
6-1.賛成派の主な論点(要約)
※個別名は挙げつつも、主張の中身だけを要約します。
- 「いざというときに、選挙ができない状態があり得る」
→ 戦争・大規模災害・パンデミックなどで投票所が機能しない場合、現行制度だけでは対応しきれないおそれ
→ 任期延長のルールを憲法に書いておくべき - 「現行法の組み合わせでは限界がある」
→ コロナのときも、法律を継ぎはぎして何とか対応した
→ 本当にギリギリの非常時には、行政府に速く動ける“緊急ボタン”が必要 - 「なし崩しでルールを破るより、憲法に明記して歯止めを設計した方がマシ」
→ 憲法・法律の想定外の事態で、黙ってルール破りが起きるより
→ あらかじめ“非常用モード”を憲法に書き、手続きを決めておく方が健全という考え方
このあたりは、竹田恒泰氏・高橋洋一氏などの発言にも共通している部分です。
出典:『緊急事態条項』は必要か?考え方から分かりやすく簡潔にお話しします。|竹田恒泰チャンネル2
出典:476回 憲法改正に緊急事態条項を!世にも珍しい日本の憲法
6-2.反対派の主な論点(要約)
れいわ新選組・立憲民主党・共産・社民など野党側や、
日本弁護士連合会(日弁連)など法曹界からは、おおむね次のような反対意見が出ています。
出典:【字幕入り】山本太郎の国会質問!「緊急事態条項が必要のデタラめさ」参議院・憲法審査会(2023年6月7日)
出典:【キケン!】高市早苗の緊急事態条項がヤバすぎる|奥野卓志
- 「任期延長は主権者の選挙権の重大な制約」
→ 議員の任期は憲法の根幹
→ 一度“緊急時なら延長OK”を認めると、非常時の名のもとにズルズル恒常化していくリスク - 「まずは公職選挙法の整備が先だろう」
→ 参議院の緊急集会や既存法の運用で、とりあえずの対応は可能
→ 本当に必要なのは、“災害時にも選挙を回せる仕組み”(郵便投票・避難先投票・名簿バックアップ・国の事務支援など) - 「権力集中と私権制限のリスクが高すぎる」
→ 緊急事態条項で内閣に権限を集中させると、政府の自己都合運用を止めにくくなる
→ 国民主権・人権保障の観点から、歯止めが弱い設計は危険
日弁連は、
「任期延長を可能とする憲法改正に反対し、大規模災害には公選法改正で備えるべきだ」という意見書も出しており、
「選挙を止める」方向ではなく 「災害時でも選挙を回す」方向の制度設計
を提案しています。
7.ワイマール憲法48条とヒトラーの教訓
緊急事態条項の議論で必ず出てくるのが、
ドイツのワイマール憲法48条とヒトラーの独裁の話です。
出典:岡山弁護士会シリーズ憲法講演会 No.25
7-1.「最も民主的」と言われた憲法が、独裁の土台に

第一次世界大戦後、ドイツでは
- 「二度と皇帝の独裁は嫌だ」という空気のもと
- 非常に民主的と評されたワイマール憲法が作られました。
しかしその後、
- ハイパーインフレ
- 政権がコロコロ変わる政治不安
- 失業・貧困の拡大
で、国民の不安とストレスは限界に近づいていきます。
そこで用意されたのが、
「非常事態用の安全装置」とされた48条
でした。
7-2.48条の内容と“落とし穴”
ざっくり言うと48条は、
国内の秩序や安全が大きく乱れたとき、
大統領は必要な措置をとることができる。
必要なら、一時的に一部の基本的人権を制限してもよい。
という内容。
一見すると「非常時のための保険」に見えますが、
後にヒトラーがこれを独裁へのスロープとして利用していきます。
専門家(例:東大大学院の石田勇治氏)らが指摘する48条の弱点は、おおむね次の通りです。
- 発動条件が曖昧
- 「安全・秩序が著しく乱れたとき」など、解釈次第でどうにでもなる表現
- 権力者にとって都合よく乱用しやすい
- 時間の歯止めが弱い
- 自動的に切れる明確な期限がない
- 「非常時」が長期化・常態化しやすい
- 国会・裁判所のチェックが弱い
- 事後承認や司法審査が十分でなく、暴走を止めにくい
- 人権停止の範囲が広い
- 言論や通信の自由まで制限され、反対意見を封じ込めやすくなる
- 地方自治への介入範囲が広い
- 連邦政府が州の業務を肩代わりでき、地方自治が実質的に乗っ取られる構造
この結果、
「最も民主的」と評された憲法が、 緊急事態条項を通じて独裁の土台に変質していった
という歴史が生まれてしまいました。
日本の弁護士会や一部政治家が、
緊急事態条項に強い警戒を示すのは、この教訓があるからです。
出典:日本弁護士連合会|クリアファイル「憲法に緊急事態条項?災害などの際に国会議員任期延長?No!それ、いりません!・国会議員の任期延長を可能とする憲法改正に反対し、大規模災害に備えるための公職選挙法の改正を求める意見書
8.G7各国はどうしているか?任期延長と私権制限
概要レベルで整理すると、G7主要国は次のような傾向があります。(細かい条文は国ごとに異なります)
8-1.任期延長について
- 憲法に延長ルールを持つ国:カナダ/ドイツ/イタリア
→ いずれも 「戦時」に限定 した設計が基本。パンデミックは含まれないケースが多い - 憲法ではなく法律で対応してきた国:イギリス
→ 戦時中に毎年「1年延長」の特別法を可決するスタイル - 任期延長そのものを認めない国:アメリカ/日本(現行)
共通しているのは、
「発動条件」「期間」「チェックの仕組み」に 厳しい歯止めを入れている
という点です。
8-2.私権制限について
G7多くの国は、緊急時に一定の私権制限を可能としていますが、
- 期間は短めに区切る
- 議会の同意・更新を必須とする
- 司法が違憲審査できるようにする
など、
行政府に“速く動けるボタン”を渡す代わりに、 強いチェック機能をセットにしている
のが一般的です。
このことを踏まえると、
「そもそも憲法に書く必要があるのか?」
「書くにしても、どこまで厳密に歯止めを設計すべきか?」
が、日本の大きな論点になります。
9.メディアと権力、そして「緊急事態条項」をどう見るか
緊急事態条項が怖いと感じる人の背景には、
- 政府や官僚への不信
- メディア報道の偏りへの違和感
- コロナ・ワクチン報道などでの情報の偏り
など、「権力と情報の歪み」への問題意識もあります。
実際、
- 省庁OBがメディア企業の役員に就任するケース(いわゆる“天下り”人事)
- 特定の不祥事や不都合なテーマがほとんど報じられないと感じる場面
などがあると、
「そんな国に、非常時の強力な権限を渡して大丈夫なのか?」
という不安が膨らむのは自然な感覚だと思います。
一方で、コロナやワクチンの起源・安全性・政策をめぐっては、
- 科学的な知見がまだ揃っていない部分
- 政治的な主張や陰謀論が入り混じっている部分
も多く、
「何が事実で、何が憶測なのか」を見極める視点が不可欠です。
だからこそ、
「権力への不信」だけで反対 「他国もやっている」だけで賛成
というどちらか一方ではなく、
- どんな権限を誰に渡すのか
- どんな歯止め・チェック機能を付けるのか
- 代替案(公選法改正など)でどこまで対応できるのか
を、一つひとつ具体的に詰めていく必要があります。
10.結論:賛成か反対かより、「何をどう変えるのか」を問い続ける
ここまで見てきたように、緊急事態条項は
- 国会議員の任期延長
- 内閣による緊急政令(私権制限につながる権限)
という、国家権力の根幹に関わる話です。
賛成派には、
- 戦争・大災害・パンデミックなど「選挙すらできない事態」への備え
- 現行制度の限界を埋めたい、という問題意識
があり、
反対派には、
- 権力集中・私権制限の暴走リスク
- 現行憲法54条や公職選挙法の改善で対応すべき、という主張
があります。
僕自身は、現状の日本の政治・行政・メディアの信頼性を考えると、
「このままの空気感で緊急事態条項を憲法に入れるのは、あまりにも危険」
だと感じています。
ただし、問題意識自体(災害時に選挙ができないリスクなど)がゼロだとは言えないのも事実です。
だからこそ大事なのは、
- 何のために改正したいのか
- どこまでの権限を認めるのか
- 発動条件・期間・チェック機能をどう設計するのか
- そもそも憲法に書くべきなのか、法律で足りないのか
を、一人ひとりが考え続けること。
そして、
「任せきり」ではなく、 信頼できる議員を自分の頭で選び、 おかしな動きには声を上げる国民側の態度
が何よりも重要だと思っています。
おわりに:情報に振り回されず、「事実ベース」で考えるために
この記事では、
- いま緊急事態条項がどこまで議論されているのか
- 自民党案の中身(任期延長・緊急政令)
- 現行憲法54条と参議院緊急集会
- 私権制限と憲法・法律の関係
- 賛成派/反対派それぞれの主張
- ワイマール憲法とヒトラーの教訓
- G7各国との比較
- メディアと権力をどう見るか
といったポイントを一気に整理しました。
ここで書いたことは、あくまで「考えるための材料」です。
- どこに同意するか
- どこに違和感を持つか
- どの情報をさらに自分で調べてみるか
は、あなた自身の判断に委ねられています。
緊急事態条項の議論は、
将来の国民投票で一人ひとりの「YES/NO」が問われるテーマです。
そのとき、
「よく分からないけど、なんとなく…」
ではなく
「自分の頭で考えたうえで、この一票を入れる」
と言えるように、今から一緒に準備していきましょう。
緊急事態条項の行方ひとつで、
「情報」と「お金」と「逃げ道」を持っている人と、そうでない人の差は、ますます極端になっていきます。
もしこの記事を読みながら、
「このまま“何も知らない側”にいるのはさすがにマズいな…」と少しでも感じたなら、
表では話せない続きは、あがき隊のメイン公式LINEで受け取ってください。
- メディアが流さない日本の裏側で起きていること
- オンライン収入源のつくり方と、個人トレードでカモられないための実務
- いざとなれば日本を出られるようにする“海外移住・拠点分散”のリアルな段取り
を、「後追い閲覧不可・アーカイブなし」で順番に解説しています。
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